ハザードマップで確認する!忙しい家族のための『在宅避難』判断と準備リスト
忙しい家族にとっての「在宅避難」という選択肢
仕事や育児で日々お忙しい中で、いざという時の防災対策について深く考える時間を確保することは容易ではありません。特に幼いお子様がいらっしゃるご家庭では、「もしもの時に、子供を連れて安全に避難できるだろうか」といった不安をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
災害発生時、すぐに避難所へ移動することが必ずしも最善とは限りません。自宅が安全な場所にある場合や、避難経路が危険な場合、あるいは感染症のリスクを避けるためなど、様々な理由から「在宅避難」という選択肢が注目されています。
しかし、在宅避難は「自宅にいれば良い」という単純なものではありません。ご自宅が本当に安全なのか、ライフラインが停止しても生活を維持できるのかなど、事前に多角的な視点から検討し、準備を進める必要があります。そこで重要になるのが、お住まいの地域の災害リスクを示すハザードマップの活用です。
この記事では、ハザードマップを使ってご自宅での在宅避難の可否を判断するポイントと、多忙なご家庭でも無理なく実践できる具体的な準備リストをご紹介します。
「在宅避難」とは?そのメリットとデメリット
在宅避難とは、災害発生後も自宅にとどまり、ライフラインが寸断された環境下で生活を続けることです。
メリット: * 慣れた環境で過ごせる: 特に小さなお子様がいる場合、環境の変化によるストレスを軽減できます。 * プライバシーが守られる: 避難所での集団生活に比べて、家族のプライバシーを確保しやすいです。 * 感染症リスクの低減: 密集を避けることで、感染症の拡大リスクを抑えられます。 * 自宅の損傷確認や復旧作業がしやすい: 自宅の状況をいち早く確認し、軽微な復旧作業を進められます。
デメリット: * 物資の調達が困難: 食料や水、生活用品などが不足する可能性があります。 * 孤立のリスク: ライフラインの停止や交通網の寸断により、外部からの情報や支援が届きにくくなることがあります。 * 自宅の安全性: 自宅が安全でなければ、かえって危険にさらされる可能性があります。
このメリットとデメリットを踏まえ、ご自宅が在宅避難に適しているかをハザードマップで確認することが、最初の重要なステップです。
ステップ1:ハザードマップで自宅のリスクを把握する
まずは、お住まいの地域のハザードマップを確認し、ご自宅がどのような災害リスクにさらされているかを把握しましょう。
多くの自治体は、以下のようなハザードマップを公開しています。
- 洪水ハザードマップ: 河川の氾濫による浸水想定区域や浸水深を示します。
- 土砂災害ハザードマップ: 急傾斜地の崩壊、土石流、地すべりなどの危険箇所を示します。
- 津波ハザードマップ: 津波による浸水想定区域や到達時間を示します。
- 高潮ハザードマップ: 台風などによる高潮の浸水想定区域を示します。
- 液状化ハザードマップ: 地震時に地盤が液状化する可能性のある区域を示します。
これらのハザードマップで、特に以下の点に注目して確認してください。
- 自宅が浸水想定区域に含まれているか?
- 洪水や高潮ハザードマップで、自宅の場所が浸水想定区域内にあるかを確認します。
- 浸水深(地面から水がどれくらい深くなるか)がどの程度かを確認しましょう。1階部分が浸水する可能性がある場合、在宅避難は極めて危険です。
- 土砂災害警戒区域や特別警戒区域内にあるか?
- 土砂災害ハザードマップで、自宅が土砂災害の危険が高い区域に含まれていないか確認します。これらの区域にある場合、在宅避難は推奨されません。
- 液状化の可能性はあるか?
- 地震時に液状化の可能性がある区域に自宅がある場合、建物の傾斜や損壊、ライフラインの被害リスクが高まります。
ハザードマップで、ご自宅がこれらの災害リスクの対象外、または極めてリスクが低いと判断できる場合、在宅避難の可能性を探ることができます。少しでもリスクがある場合は、避難所への避難を優先的に検討してください。
ステップ2:住まいの構造と周辺環境を確認する
ハザードマップで自宅のリスクが低いと判断できたとしても、住まいの状況や周辺環境も在宅避難の可否を左右します。
- 建物の耐震性・耐水性:
- ご自宅は新耐震基準(1981年以降の建築基準)を満たしていますか?
- 過去に大きな水害を経験し、浸水対策が施されているでしょうか?
- ライフラインの状況:
- 電気、ガス、水道が停止した場合、どの程度で復旧が見込まれるか、代替手段があるかなどを把握しておきましょう。マンションの場合、停電でエレベーターが停止すると、高層階からの移動が困難になります。
- 周辺環境:
- 自宅周辺に倒壊する可能性のある建物や塀、電柱などはありませんか?
- 火災が発生した場合、延焼のリスクはどの程度でしょうか?
これらの要素を総合的に考慮し、ご自宅が災害時に構造的な安全を保てるか、また、ライフラインが停止しても生活を維持できるかを判断します。
ステップ3:忙しい家族のための『在宅避難』準備リスト
在宅避難が可能と判断できたら、次は具体的な準備を進めましょう。多忙なご家庭でも無理なく備えられるよう、ポイントを絞ってご紹介します。
1. 食料・飲料水(最低3日分、推奨7日分)
- 水: 飲料水として1人1日3リットルを目安に。生活用水も考慮。
- 主食: 米(無洗米)、レトルトごはん、カップ麺、乾パンなど。調理不要または簡単なもので、子供が食べやすいものを。
- 副食: 缶詰(魚、野菜、果物)、フリーズドライ食品、レトルト食品。栄養バランスも考慮し、野菜がとれるものを。
- 子供向け: 離乳食、幼児食、アレルギー対応食、お菓子、粉ミルクなど。
- ローリングストック法: 日常的に消費する食品を少し多めに購入し、使ったら使った分だけ買い足す方法です。消費期限が近いものから使い、常に一定量を備蓄しておくことで、無理なく備えを維持できます。
2. 生活用品・衛生用品
- 簡易トイレ: 凝固剤付きの携帯トイレ。断水時に非常に役立ちます。
- カセットコンロ・ガスボンベ: 調理や湯沸かしに。
- 電池・懐中電灯・ランタン: 照明確保。手回し充電式やソーラー式も検討。
- モバイルバッテリー・充電器: 連絡手段や情報収集のために。
- ウェットティッシュ・除菌シート: 断水時の衛生対策。
- 生理用品・おむつ: 必要量を普段から少し多めにストック。
- 常備薬・救急用品: 絆創膏、消毒液、胃腸薬、解熱剤など。
- ごみ袋: 大量に発生するごみの処理に。
3. 情報収集手段
- 手回し充電式ラジオ: 電源がなくても情報収集が可能。
- スマートフォンの充電環境: モバイルバッテリーの準備。
4. その他(子供と過ごすための工夫)
- おもちゃ、絵本: 長時間の避難生活で子供の不安を和らげるために。
- 毛布、寝袋: 体温保持と安心して眠るために。
これらのリストを参考に、ご家族で必要なものを話し合い、優先順位をつけて少しずつ準備を進めていきましょう。リストは冷蔵庫に貼るなど、目につく場所に置いて定期的に見直すことをお勧めします。
ステップ4:『在宅避難』が難しい場合の対策
ハザードマップでご自宅のリスクが高いと判断された場合や、準備が難しい場合は、迷わず避難所への避難を計画しましょう。
- 避難所の確認: 自宅から一番近い避難所だけでなく、複数の避難所や親戚・友人の家など、二次的な避難場所も検討しておくことが大切です。
- 避難経路の確認: 災害の種類によって安全な避難経路は異なります。ハザードマップで指定されている安全な経路を家族で確認し、実際に歩いてみることも有効です。
- 非常持ち出し品の準備: 避難所へ移動する場合に備え、必要最低限の非常持ち出し品(貴重品、常備薬、着替え、子供のおむつ・ミルクなど)をリュックにまとめておきましょう。
まとめ:ハザードマップを活かし、家族で考える防災
ハザードマップは、ただ地域の危険箇所を示すだけでなく、ご自宅での「在宅避難」が可能か否かを判断するための重要なツールでもあります。多忙な日々の中でも、この記事でご紹介したステップを参考に、まずはハザードマップを確認することから始めてみませんか。
ご家族の安全を守るためには、災害リスクを正しく理解し、それに基づいた具体的な準備と計画が不可欠です。計画的な備えは、いざという時の冷静な判断につながり、家族の安心感を大きく高めてくれます。ぜひご家族で話し合い、定期的に備蓄品や計画を見直す習慣をつけましょう。